2005.10.9
いよいよお茶事、当日!
ほとんど眠れないまま、7時に起床。着付けのとき、帯枕がないことに気付き、早速ワタワタするわたし。朝からすでに汗だくになりながら、10時前に先生宅へ。
床の間飾りのリハーサルをし、待合の設営。たばこ盆なんて、はじめて見た。昨夜書いたミニ掛け軸、「気は長く心は丸く腹たてず口つつしめば命ながし」をとりつけ、みんなで寄せ書きした屏風色紙を飾る。料理の準備をする水屋は大忙し!裏方は終始、戦争状態だった。
亭主のわたしが迎え付けの礼ををして、いよいよお茶事がはじまった。お客様はみな、いつも稽古を共にしている友達。でも、いつもと違う緊張感に、正客との挨拶のやり取りも思わず声がうわずる。そして懐石がスタート!
下拵えは前日に先生が、当日の調理や盛り付けは水屋係や半東さん役がやってくれるため、わたしは料理をひたすら座敷に出す役目に徹する。しかし、ただお出しするだけにあらず!順番、タイミング、中での作法や渡し方・受取り方、そえる言葉など、いっときたりとも気を抜けないのだ。
一旦襖を閉じてさがれば、すぐに二階の台所に駆け上がり、次の手順の確認をする。でも、常に茶室内の様子にも気を配っていないといけないから、二階に長居は出来ない。結果、着物で何十往復もすることになり、中盤で既に襦絆のしたは汗みどろになっていた。くわえて、なにしろみんな初体験。教則本と首っぴきだから、いろいろなタイミングがなかなかうまくあわず、お客様同士のんびりおしゃべりに花が咲いていたのを差し引いても、通常の2倍以上の時間がかかってしまった。
懐石が終わり、縁高で主菓子を召し上がっていただいたあと、中立ちといって、一旦お客様には待合まで退席していただく時間がある。そこで床の間の模様替えをして、あらためて濃茶のお点前に入るのだ。わたしは急いでハワイ&ニューヨークセットをひっつかみ、慣れない手つきで飾り付ける。この手づくりの床の間飾りの前で一服のお濃茶を点てることこそ、このお茶事のメインイベントなのだ!
うわっ、すごい…!改めてお席入りした、彼女の喜びの第一声を襖ごしに聞く。ジンと目頭が熱くなる。この声が聞きたくて、ここまで頑張れたのだから。
そして、濃茶の中置き点前。静寂の中、みんなの視線を感じながらのお点前は、異様に緊張した。茶筅や茶杓など、軽いものを持つと、手が震えているのがはっきりわかるほど。それでも、初めて使う私のとっておきの高取茶碗で心を込めて練ったお茶を、彼女はおいしいといって微笑んでくれた。もうそれだけで、すべてが報われた気がした。
不備もあった。粗相もあった。ずっと立ちっぱなしで、水さえ口にできなかったのもつらかった。でも、たった一服のお茶のおもてなしを、これだけの時間と手間をかけてする喜びは、何にもかえがたいことを知った。
夜10時、泥のような生あたたかい疲労をたっぷりと内側に感じながら、帰路につく。でも不思議と、心はふわふわいまにも舞い上がりそうなくらい軽かった。夜空を見上げた私のうえに、きんもくせいの香りが、ゆっくりゆっくり降ってきた。
