2005.8.11
ラジオと撮影の日。
待ちに待っていたものが、京都から届いた。京都祇園の幾岡屋さんで注文した、花名刺。昔からずっと使われている、舞妓さんや芸妓さん専用の古式ゆかしい名刺だ。
選ぶとき、いままで作った人達のカタログ見本をみせてもらった。その種類の多いこと!舞妓さんや芸妓さんはもちろん、有名な女優さんやアナウンサー、タカラジェンヌまで「え、このひともここで作ったんだ!」という名前がたくさん並んでいて驚いた。
でも数ある花名刺の中で、「声優」という肩書で作ったひとは見当たらない。ひょっとして第一号なのかしら?とドキドキしながら、柄や色や文字の雰囲気を、ひとつひとつ決めていった。
カタログをじっくり読み耽っている最中も、リアル舞妓さんや芸妓さんが小物を買いにやってくる。決して広くはない薄暗い店内で、この風呂敷がいい、あのかんざしもすてきやなあというやり取りを頭のうえで聞いていると、昔ながらの「京都な時間」に身を置いているような気分になる。ふと、いつまでもここで、カタログをめくっていたくなった。
あれもこれもと決めかねて、10枚セットからバラまで、大量に注文したつもりでいたけれど、いざ届いてみると、てのひらにちょこんとおさまる小さな箱が一つ。蓋をあけると、職人さんが一枚一枚手で刷った花名刺が、きれいに重なっていた。紙のまわりを縁取る、あでやかな紅色が美しい。
「声優 大原さやか」という、緋色の柔らかい文字が、桜や柳や風鈴の古典柄のうえにソッと寄り添っているのを見て、わたしはたまらなくうれしくなった。一枚一枚に、手のぬくもりと京の風情が感じられるたからもの。大切なひとたちに、喜んでくれるひとたちに、すこしずつ渡していこう。
蒸し暑い私の部屋に、鴨川から吹く京都の風が、一瞬とおりすぎた気がした。
