2003.10.5

 前からいきたかった、奥嵯峨の直指庵へ。

 本当に穏やかで、美しい秋の日。

 風と、鳥と、虫の声しかきこえない。あちこちに真っ赤な彼岸花がすっくと咲き、遠くに目をやれば、茅葺き屋根や、稲穂を刈り取ったばかりのむきだしの畑が広がる。

 風は、どこまでもさわやかに、甘やかなきんもくせいの香りを含んでいて、なんだかすこしずつ酔わされていくような錯覚にさえおちいる。

 直指庵は、とても、しずかだった。

 

 想い出草ノートというものが置いてある。

 ここを訪れたひとが、断ち切れない想いや意地や、さまざまな気持ちを置いていく。そんな場所。

 気付くと、座り込んでから3時間以上たっていた。こんな感覚は久しぶり。ノートをめくっていると、いろんな人生をかいまみているような不思議な気分になってくる。

 亡くした人や別れた人、恋しい人への切実なおもい、死を願う気持ち、後悔、愛情、信頼、希望、そして絶望。

 メールに慣れてしまったいま、自分以外の人の肉筆を目にする機会が少なくなった。こうして改めて見ていると、字の大きさ、かたち、筆圧までがみな違う。字とは、これほどまでに人間をあらわすものだったか。迫りくる想いたちに、めまいすら感じる。

 ある人は愛する人を傍らに満ち足りた気持ちで、またある人は、涙を流しながら震える手でペンをとる。

 迷って悩んでつまづいて、また立ち上がって生きていく。人生が、すごく愛おしい。そんな圧倒的な気持ちがあふれてきて、涙にむせかえりそうになる。心が洗われるようだった。

 

 …ああ、そうか。

 今回の京都での仕事は、この時期このタイミングのいまのわたしが、ここにくるためだったんだ。

 理屈ではなく、実感するために。こころのフィルターを、とりはずすために。

 ありがとう、とおもった。

 何に対してかは、よくわからないけど。

 

 夜は、河原町五条のちかくにあるお店「枝魯枝魯ひとしな」にいく。半年前に勇気をだして一度いったきりだったのに、覚えていてくれて大感激。

 カウンターのみの小さなお店だが、季節ごとの旬の食材を使って、とびっきりの創作京料理を食べさせてくれる。もちろん、美味しいお酒もね♪

 最高のほろ酔い気分で、ときどき板さんたちと言葉を交しながら、閉店間際までのんびりすごす。

 さりげなくこころをくだいてくれた、すてきなふたり。右が板長のまーくん、左が石井選手似のタカさん。
 「はい、京みやげ!」とデザートのほうじ茶アイスをサービスしてくれたまーくん、ありがとう!こころづかいが身にしみました。ごちそうさまでした!(^-^)